出逢わない巡り会い

コンビニから出たところの信号に足止めをくらい、店内とは縁遠い暑さにうだっていると、道を挟んだところで同じく立ち往生をくらった1人の女性に目が止まった。


大学生に似つかない、しかし丁寧に手入れされてるのがわかる黒くて綺麗な長い髪、暑さに似合わない黒い7部丈のニットに長めのスカート、いかにもこの時期が苦手そうな血色の悪い肌。


メガネもコンタクトもしていなかったので顔こそ見えはしなかったが、彼女のジトッとした重苦しい佇まいに胸を打たれた様な少し懐かしい感覚を覚えた。


とは言え今から帰宅する僕と、恐らく大学に足を運んでいる彼女が交わる未来はどこにも見当たらないし、そんな上手い話いまどき誰も体感出来ないだろう。


ジワリと垂れてくる汗とイヤホン越しに聞こえる救急車のサイレン、そして明日には明後日には忘れてる様な些細な出会いが確かな夏の訪れを再確認させてくれた